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図解入り「着物の衣替え」について(着物編)

着物

青森県むつ市の着物専門店「きもの後藤」です。

みなさんは「着物の衣替え」についてご存じですか?

季節が春から夏に変わる頃、厚手のお洋服はタンスにしまい薄手の着こなしに変わります。
中学校や高校の学生服も冬服から夏服に変わります。
制服やお洋服と同じように、着物にも「衣替え」があります。
ただし、着物はその長い歴史の中で広く認知されている決まりごとがありますので、今回は図解入りで順番にお話していきたいと思います。
まずはじめに下図の「着物の衣替えの流れ」をご覧ください。

今は着る方の自由度が増していますので、単衣や薄物の着用時期は、およその目安として参考にしてください。

着物は一年の間に袷(あわせ)単衣(ひとえ)夏物(薄物)の3タイプに衣替えしていくことになります。

衣替えする3タイプの着物について

仕立ててある着物の裏側をご覧いただくと分かるのですが、袷(あわせ)の着物には胴裏・八掛といった裏地がついていますが、単衣(ひとえ)の着物には裏地が付いていません。

袷(あわせ)の訪問着(裏地あり)
単衣(ひとえ)の色無地(裏地なし)

すなわち袷(あわせ)や単衣(ひとえ)というのは仕立て方のことになります。
裏地が付いていれば袷仕立て(あわせじたて)、裏地が付いていなければ単衣仕立て(ひとえじたて)となります。

袷(あわせ)の小紋(裏地あり)
単衣(ひとえ)の小紋(裏地なし)

夏物(薄物)の着物も裏地が付いていないので、単衣(ひとえ)に仕立てられている着物になります。ただし、表地も透けているので単衣よりも更に涼しい!ということなんです。

  • 袷(あわせ)・・・・表地+裏地
  • 単衣(ひとえ)・・・表地だけ(表地は袷と同じ生地)
  • 夏物(薄物)・・・・表地だけ、なおかつ表地が透けている
夏大島紬&夏名古屋帯
透かし織という表記。夏物は表地そのものが透けています

上記の他にも、木綿の着物、秋冬シーズンにぴったりなウールの着物(単衣仕立て)、単衣の季節にちょうど良い紗袷(しゃあわせ)の着物などがありますが、今回は一般的な衣替えについてお話させていただきます。

それでは「季節の衣替え」について順を追って紹介していきます。

6月からの衣替え「単衣(ひとえ)の着物」

季節は春から初夏へ、汗ばみ始める6月からは「単衣(ひとえ)」の時期になります。
「単衣(ひとえ)」というのは、その名の通り「一枚の布」。
一枚の布地で仕立てた着物は、着心地がとっても軽やかです。
汗ばむ季節になり、単衣物に着替えた時の着物の軽やかさ、さっぱり感には感動ものです。
見た目こそ、袷(あわせ)の着物と同じに見えますが、裏地が無いだけでこれほど変わるものかと衣替えの大切さを実感します。


この時期の単衣着物には「夏の帯と小物」を合わせるのが一般的となっています。

『これから暑くなりますよ〜』と季節に先駆けて少しづつ装いを軽やかにして快適に過ごすための工夫なのだと思います。

(季節ごとの着物と小物の取り合わせについては別記事に書く予定です)

7月からの衣替え「夏物・薄物の着物」

いよいよ夏本番の7月から、もう一度衣替えが行われます。
仕立て方は同じ「単衣(ひとえ)仕立て」ですが、今度は生地そのものが薄手の素材になります。
夏にリネンのシャツを着るように、麻素材や絽・紗という透け感のある絹織物が中心になります。
長襦袢の白が透けて見えるぐらい薄手で、ぱっと見で夏物と分かる着物なので、「夏物」とか「薄物」と呼ばれています。
だいたい7月~8月に着るのがベターと言われていますが、環境の変化(温暖化)もあり地域性も様々です。「真夏の装い」として適していれば着用されるのが良いと思います。


夏着物には「夏の帯と小物」を合わせるのが一般的となっています。

夏に着る着物と言えば「ゆかた」がありますね。
ゆかたはもちろん「夏物・薄物」の種類で、7月~8月の暑い日に着るのがぴったりです。
ゆかたはお洋服で言えば「Tシャツ」に近いものなので、カジュアルな場面で楽しんで頂きたいと思います。
※ゆかたでもコーデしだいでドレスアップすることもできますよ♪(別記事で紹介します)

9月からの衣替え「(再び)単衣の着物(秋単衣)」

10月からは再び「単衣(ひとえ)の着物」に衣替えです。
暑さのピークが過ぎて長袖シャツが着たくなるのと同じように、単衣(ひとえ)の着物の出番となります。
ただし、6月と9月では大きく異なる点があります。
それは「帯と小物合わせ方が6月単衣とは異なる」という点です。
「季節と着物の取り合わせ」については別の機会に書きますが、この時期の秋単衣の着物には「透け感の無い袷用の帯と小物」を合わせるのが一般的となっています。

季節を先取り「これから秋がやってくる」のを踏まえての単衣なので、「秋ひとえ」と言い、秋の装い方に変化するわけです。

10月からの衣替え「袷(あわせ)の着物」

一般的に10月~5月までの寒い時期に着る着物を「袷(あわせ)仕立ての着物」と言って、きものの裏側にも裏地が合わさって仕立てられています。
生地が二重に合わせてあるので暖かくて寒い季節にはぴったりの仕様となっていますので「袷(あわせ)仕立ての着物」は暑くない1月~5月、10月~12月に着ることが一般的とされています。

12か月のうち8か月は袷(あわせ)の着物の時期になります。
※今は着る方の自由度が増していますので、単衣や薄物の着用時期は、およその目安として参考にしてください。

成人式の振袖や入卒シーズンの着物は「袷(あわせ)仕立ての着物」ですし、一年の大半は「袷(あわせ)着物の時期」なので着物=袷の着物と言うイメージになります。

袷仕立ての訪問着

衣替えのルールに絶対はない

いかがでしたか?着物の衣替えについて当店での考え方を簡単に説明させて頂きました。
ざっくりでも着物の衣替えと季節感について知っていただければありがたいです。

ただし、このルールは絶対という訳ではありません!
下記のように、お客様によって着用の仕方も様々です。

  • 例1)5月下旬 
    まだ袷(あわせ)の時期だけど、暑いから単衣の着物を着用する方
  • 例2)6月上旬
  • 単衣の時期だけど、まだ寒いから袷の着物を着用する方
  • 例3)8月下旬
    夏物(うすもの)の時期だけど、もう涼しいから単衣の着物を着用する方
  • 例4)9月下旬
    単衣の時期だけど、もう寒いから袷の着物を着用する方

衣替えはあくまで目安にしていただいて、その日の気温や状況に合わせて臨機応変に対応して頂ければと思います。

四季を大切にするお茶席であったり、伝統を受け継ぐ立場にある方は、着物で季節を表現することも求められますが、一般の方はあまり重く受け止めないで頂きたいと思います。
着物姿はそれだけで気持ちの表れを感じます。間違いなく先方さんに喜ばれますし、会場も華やかなものになります。
機会があれば、ぜひ着物でお出かけ頂きたいと思います。

結婚式の黒留袖について

披露宴の場合、会場のエアコンが完備されているため、季節に関係なく親族の方はほとんど『袷の留袖』を着用しています。
めったに着る機会がない方にとっては、式服としてお召しになることが一番の礼儀です。

せっかくの機会だから単衣や絽の黒留袖をお召しになりたいという方のために、当店では単衣や絽の黒留袖のご相談も受け付けております!

着物の装いには「季節を先取り、季節を楽しむ」という一面もあり、衣替えには季節感を大切にしてきた日本人の美意識を感じることができますね。
少しでも皆様の着物ライフの参考になれば嬉しいです。

きもの後藤では、季節の着物相談やタンスこんシェルジュも承っております。
どうぞお気軽にお問い合わせください。


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